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文旦と親父

大好きな土佐文旦。高知県の名産だ。

毎年、時期が来ると20kgはお取り寄せをしてしまう。

なぜそんなに好きなのか考えてみた。

 

もちろん味も好きなのだが、時期が限定であることと、都内であまり店に出ることがないという希少性は僕のテンションをアゲてくれる大きな要因だ。

父方の親戚が高知にいて、僕が小さな頃は毎年送ってくれたことが好きになるきっかけだった。それを母が山のように剥いてくれる。その行為に母の愛情を感じたのかもしれない。

ウチは親父が大変な偏屈者だったので、親父が持ってきたら好きにならなかったもしれない。

 

と、ここまで考えてフト気付いた。

親父が持ってきたものや親父が好きだったもので、僕が嫌いなものはほとんど無い。

それどころか、よく考えると同じようなものが好きだ。

ドイツワイン、あん肝、チーズ。鉄道、クルマ etc..

気づくとソーセージにマスタードを大量に乗せてしまうところや、パスタにチーズをついかけすぎてしまうところも似ている。

 

あんなに毛嫌いしていた親父。

しかし案外そうでもなかったのかな。

 

考えてみると、今ならわかる。

親父はどうしていいか、わからなかったのだ。

何も信じられず、誰も助けてくれないと思っていた。

誰もわかってくれないと思い、自分のことは何も語らなかった。

 

僕は、親父のことを知りたいと思っていた。

明確に「知りたい」と思ったことを覚えている。

 

しかし、取りつくシマもない態度。ともすると怒りの激情に吹き飛ばされてしまう。

グツグツと煮えたぎるマグマの上を歩いているような男だった。

親父も苦しかっただろう。

 

「どうすればいいかわからない。助けてほしい。」

もし親父がその一言を言えたなら、助けるために恐らく家族全員が集結したのにな。

 

何も語らずに亡くなった親父のことを思うと、今でも残念な気持ちになる。

偏屈な態度は、ともすると孤独を誘う。

この辺りも、自分が似ているところがあるかもしれない。

 

酸味と渋み、甘みが絶妙な文旦の旨みを味わいながら、そんなことを感じたのだった。

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《1日1新》

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